カニ先生の生物基礎_第6講「代謝とATP」
受験生のみなさま、カニ先生です!
第1講で学習したように、すべての生物は、ATPと言う化学物質を生命活動のエネルギーに利用しています。この活動を代謝といいます。本講では、ATPの構造と代謝への利用について学習していきます。
[目次]
代謝とエネルギーの関係
生物は外界から物質を取り入れ、細胞内で合成や分解し、さまざまな物質に変化させています。このような生体内での物質の変化を代謝といい、同化と異化に分かれます。
同化
同化は、生物体内で簡単な物質から複雑な物質を合成する反応で、この反応にはエネルギーが必要です。同化の代表例が光合成です。植物が行う光合成は、光のエネルギーを使って、二酸化炭素と水から有機物を作りだす反応ということができます。
異化
異化は、複雑な物質が簡単な物質に分解される反応で、この反応の過程で放出されたエネルギーを生命活動に利用しています。異化の代表例が呼吸です。生物が行う呼吸は、酸素を用いて、有機物を二酸化炭素と水に分解する過程でエネルギーを取り出す反応ということができます。
ATPの構造
第1講で学習したように、すべての生物は共通して、ATPという物質を生命活動のエネルギーに利用しています。ATPは、アデノシン三リン酸という化学物質で、アデニンとリボースが結合したアデノシンに、リン酸が3個結合した図のような構造を持っています。
ATPがエネルギーの通貨と呼ばれる理由
ATPのリン酸同士の結合を高エネルギーリン酸結合と言います。この高エネルギーリン酸結合が切れ、ADPとリン酸に分かれるときに、エネルギーが発生します。生物の生命活動はすべて、ATPという物質を介して行われるため、ATPはエネルギーの通貨と呼ばれます。したがって、ATPという物質はエネルギーを運ぶ器のような物質ということもできます。
エネルギーにとっての器がATPで、お金の器はお札ってことだな。石器時代なら綺麗な石で、江戸時代なら銅、最近じゃ電子マネーのカードとかも似た感じだ。
さすがビバ夫くん、とってもするどい考察だね。
僕は、社会も得意だからな。
ますます、わかんないよー。
とりあえずATPはエネルギーってそういうことでいいっすか、先生?
そうだね!複雑に考えても悩むぐらいなシンプルで良いと思います。
わたしは、ウサ子ちゃんの考え方の方が分かりやすかった!
シンプルイズベストだな。
まとめ
- 生体内での化学反応を代謝といい、エネルギーを吸収して簡単な物質から複雑な物質を合成する過程を同化、複雑な物質を簡単な物質に分解する過程でエネルギーを放出する過程を異化という。
- すべての生物は、ATPのリン酸同士の結合を高エネルギーリン酸結合といい、この結合が切れ、ADPとリン酸に分解される過程で、放出されるエネルギーを生命活動に利用している。
- 生物の生命活動はすべて、ATPという物質を介して行われるため、ATPはエネルギーの通貨と呼ばれる。
カニ先生の生物基礎_第5講「生物の階層性」
受験生のみなさま、カニ先生です!
本日は、生物基礎_第5講「生物の階層性」について授業を進めていきます。
[目次]
多細胞生物の階層
多数の分化した細胞からなる生物を多細胞生物と言いましたね。前回の復習になりますが、同じ機能を持つ細胞が集まって組織を作り、組織が集まって器官、器官が集まって1個体が形成されます。
細胞→組織→器官→個体という階層
ミクロな世界の階層
すべての生物は、細胞を基本単位に持つということを学習しましたが、もう少し小さな(ミクロな)視点を持てば、細胞よりも小さな階層も存在します。
細胞の中には、いくつかの構造体を観察することができたのを覚えてるかな?
はーい!確か細胞小器官っていうのがありました!
そういえばいたな、あのひょうたんみたいなのと緑の丸いやつか。
3講で学習したように細胞の中には細胞小器官と呼ばれる構造体がありました。細胞小器官も具体的には、分子やイオン、原子と呼ばれる小さな粒子から構成されています。この辺りは、化学で詳しく学習する話ですね。
原子→分子やイオン→細胞小器官→細胞という階層
僕は化学も得意だから、この辺は余裕だな。
先生、やっぱ化学も学習しないとダメですか?
そうだね。生物も基本的には原子や分子からできている以上、詳しく学習するためにはどうしても化学から逃げることはできないんだ。生物だけだとどうしても暗記になってしまうようなことが、化学をしっかりと学習しておくと色々なことが理解できるようになるから、やっておいて損はないんだよ。
暗記は嫌いだ。しょうがないから化学も勉強するか。
化学の勉強も頑張ります!
マクロな世界の階層
今度は、マクロな世界を見ていこう。 シマウマは、単独では生活せずに群れを作って生活します。この群れを個体群と言います。また、草食動物を食べるライオンやチーターのような生物を捕食者、シマウマのように食べられる生物を被食者といい、ある地域には捕食者の個体群と被食者の個体群が存在します。これをひとまとまりにして生物群集と言います。また、ある地域には空気や水、光などの無生物環境も存在し、生物群集を含めた環境全体を生態系と呼びます。
個体→個体群→生物群集→生態系という階層
急に世界が広くなりましたね。
生物という科目は、分子や細胞といった小さな世界から、生態系や環境問題まで大きな世界まで扱っていきます。この辺りが生物が難しいところかもしれませんね。
ふ、面白くなってきたじゃないか、望むところだ。
まとめ
- 多細胞生物には、細胞→組織→器官→個体という階層が存在。
- 細胞よりもミクロな世界、細胞→細胞小器官→分子やイオン→原子という階層が存在する。
- 生物よりもマクロな世界、個体群→生物群集→生態系という階層が存在する。
カニ先生の生物基礎_第4講「単細胞生物と多細胞生物」
受験生のみなさま、かに先生です!
本日は、生物基礎_第4講「多細胞生物と生物の階層」について授業を進めていきます。
[目次]
単細胞生物
からだが一つの細胞からなる生物を単細胞生物といいます。大腸菌や乳酸菌などの原核細胞である細菌や、真核生物の酵母菌やゾウリムシ、アメーバーなどが代表例です。単一の細胞からなるため、ゾウリムシのように特殊な細胞小器官が発達しているものもいます。
多細胞生物
多数の分化した細胞からなる生物を多細胞生物といいます。細胞が分化しているというのは、人間であれば皮膚の細胞と内臓の細胞などのように、各々の細胞がそれぞれ別の機能を持ち、お互いの持ち場ではたらいているということを指します。同じ機能を持った細胞が集まって組織を作り、組織が集まって器官が形成されます。そして互いの器官同士が協力し合い、1個体を形成しているのです。
1個体をうちの家族で例えると、母ちゃんは朝食を作り、父ちゃんは朝のゴミ出し、わたしは植木の水やりをするみたいに、お互い仕事を分担して生活しているっていう感じか。
分かりやすくて、いい例えだと思いますよ、ウサ子くん。
すごい!ウサ子ちゃん!
ふふ、決まったな。
まあまあだな。
単細胞生物と異なる点は、個々の細胞にばらすと、その細胞は生活することができません。役割を細分化してしまったために、個々の細胞1個で生活することはできなくなってしまったとも言えます。例えば、あなたから腕を切り取るとしましょう。その腕は腕だけで生きていくことができず、しばらくすると腐ってしまいます。
このように生物のからだが、細胞→組織→器官→個体という段階を持つことを生物の階層性といます。
単細胞生物から多細胞生物へ
少し込み入った話になりますが、多細胞の原核生物はいません。この内容の深い理解は、生物基礎のみを学習している人には不要ですが、理解しておいて損のない内容です。
生物は、まず単細胞の原核生物が起源と言われています。やがて、単細胞の真核生物へと進化する生物が登場します。そして、単細胞の真核生物が共同体を作り、やがて多細胞の真核生物へと進化していきます。したがって、多細胞の原核生物は存在しないと言われています。
まあ、巨大な細菌(多細胞の原核生物)がいたら怖いしな。そんな感じで覚えおけばいいか。
細胞内共生説だな、僕はすでに学習済みだ。
なんだそれ。
ウサ子くん、細胞内共生説についてはこれから学習するから大丈夫。
一つ一つ丁寧に学習していこうね。
お預けってやつか。
次回の授業も楽しみだね♪
まとめ
- 多細胞の原核生物はいない。すべての原核生物は単細胞生物である。
- 多数の分化した細胞からなる生物を多細胞生物という。
- 同じ機能を持った細胞が集まって組織を作り、組織が集まって器官が形成され、器官が集まって、1個体となる。これを生物の階層性という。
カニ先生の生物基礎_第3講「細胞の種類と構造」
受験生のみなさま、かに先生です!
本日は、生物基礎_第3講「細胞の種類と構造」について授業を進めていきます。
本授業では、真核細胞と原核細胞が登場しますが、果たしてカニ先生は真核細胞なんでしょうか、それとも原核細胞なんでしょうか?
[目次]
細胞の種類
細胞は、大きく分けて核を持つ真核細胞と、
核を持たない原核細胞の2種類に分かれます。
私たちの遺伝子の本体であるDNAがひも状に連なったものを染色体と言います。
この染色体が、核膜に覆われているものを核と言います。
真核生物は、染色体が核膜に覆われた状態で細胞の中に存在していますが、
原核生物は、染色体が細胞膜に覆われず、むき出しの状態で細胞の中に存在しています。
真核細胞は、染色体が核膜の中に凝縮された状態で存在していますが、
原核細胞は核膜がないので、染色体が細胞の中でぐちゃぐちゃっとむき出しの状態になっていますね。
原核細胞
原核細胞からなる生物を原核生物と言います。
原核細胞は、外側が細胞膜、さらには細胞壁で覆われ、その表面には、短くてふさふさと毛のように生えている突起である繊毛(せんもう)と、長くにょろっと伸びた鞭毛(べんもう)があります。その内部は、細胞質基質と呼ばれる液体で満たされいます。注目すべきポイントは、遺伝子の本体であるDNAがむき出しの状態で存在しているということです。
真核細胞
真核細胞からなる生物を真核生物と言います。
原核生物以外の生物は、すべて真核生物です。カニ先生は真核生物の節足動物に該当するので、カニ先生の細胞は真核細胞ということになります。
でも先生って見た目細菌っぽくないですか?
どう見ても見た目カニじゃないですよね。
私は、細菌じゃない....カニです、ぶくぶくぶく...
真核細胞に共通する構造
全体像
遺伝子の本体であるDNAがヒストンというタンパク質と結合して、細くひも状になったものを染色体と言います。真核生物では、この染色体が膜に覆われた核の内部に存在しています。外側は細胞膜に覆われ、内部は細胞質基質と呼ばれる液体で満たされいます。また真核生物には、原核生物にはない様々な機能を持つ細胞小器官が存在します。
ミトコンドリア
有機物を燃焼し、ATPを合成することで、エネルギーを作り出す細胞小器官。
有機物を燃焼し、ATPを合成することで、エネルギーを作り出す。このことを生物学的に呼吸と言います。
先生、その前にATPってなんすか?
ウサ子ちゃん、生物はATPっていう物質をエネルギーに利用しているって最初の授業で話してたよ。
ATPを合成することで、エネルギーを作り出すって何のこっちゃ分からん。
ウサ子くん、いい質問だね。ATPという物質が何のかは、この後の章で学習するから、とりあえず今はATPはエネルギーって思ってもらって大丈夫だよ。
はーい、先生!
まあ、とりあえず、先に進むか。
細胞膜
細胞の表面にある、リン脂質の二重層からなる膜で、厚さはおよそ10nm程度。
動物細胞と植物細胞の違い
葉緑体
植物細胞にのみ含まれる。クロロフィルという色素を持ち、光合成により、光のエネルギーと二酸化炭素からATPを合成し、そのATPを用いて有機物を合成する細胞小器官
光のエネルギーと二酸化炭素からATPを合成し、そのATPを用いて有機物を合成する。このことを光合成と言います。
細胞壁
植物細胞にのみ含まれる。細胞の保護や形態維持の役割を持つ。
液胞
不要物の分解や貯蔵、浸透圧の調節、植物細胞は色素としてアントシアンなどを含む。
植物細胞で発達した構造が見られる。
動物細胞にも液胞はありますので、正誤問題などにある「液胞は植物細胞にのみ含まれる」は誤りです。
こういう問題めんどくさいな。
ウサ子くんのいう通り、確かにややっこしいよね。でもこういうところが差が付くところだからしっかりと学習しておこう。
はーい、先生!
真核細胞と原核細胞の違い
原核細胞と真核生物の違いは、大きく2つ存在します。
少し難しいかもしれませんが、染色体が核膜に覆われていないと核を持っていないは同じ意味になります。
えーそうなの?日本語って難しいなあ。
生物の問題は、正誤問題のような言葉の定義に関する問題がたくさん出てきます。細かいところだけど、こう言う言葉の部分をしっかり教科書を読んで勉強しておくと、テストで役に立つんだよ。
分かりました〜教科書しっかり読んで勉強します!
まとめ
- 細胞は大きく分けると、原核細胞と真核細胞の2種類に分かれる。
- 原核細胞は、染色体がむき出しになっており、表面には細胞膜だけでなく、細胞壁がある。
- 原核細胞は真核細胞と異なり、核をもっておらず(=染色体が核膜に覆われていない)、ミトコンドリアや葉緑体などのほとんどの細胞小器官をもっていない。
- 植物細胞と動物細胞の違いは、植物細胞は細胞壁、葉緑体を持ち、発達した液胞があるということ。
カニ先生の生物基礎_第2講「細胞研究の歴史」
受験生のみなさま、かに先生です!
本日も、生物基礎の授業を前回の続きから進めていきます。
本日のテーマは、「細胞研究の歴史」についてお話ししたいと思います。
[目次]
細胞に関する研究の歴史
前回の授業で、生物は細胞を基本骨格として共通に持っているという話をしましたね。
今回は、生物の基本骨格は細胞であるということがどのように発見されてきたのかという歴史を学んでいきましょう。
研究者 | 研究内容 |
---|---|
フック | コルク片を観察し、 構成する小さな部屋を細胞と命名 |
レーウェンフック | 微生物を発見 |
ブラウン | 細胞内に核を発見する |
シュライデン | 植物についての細胞説を提唱 |
シュワン | 動物についての細胞説を提唱 |
フィルヒョー | 細胞は細胞分裂によって生じる ということを提唱 |
細胞の発見
ロバート・フックは、自作の顕微鏡を用いてコルク片を観察し、そのコルク片が小さな部屋から構成されていることを発見します。その小さな部屋を細胞と命名します。
フックさんは、中学校の理科でも有名なばねに関するフックの法則を見つけた人でもあります!
この時代の研究者はいろんなことを研究していたんだね。
微生物の発見
レーウェンフックは、自作の顕微鏡を用いて、微生物の観察に成功します。
レーウェンフックさんは、研究者ではなく商人だったようです。当時大流行していた胡椒がなぜ辛いのか?に対して、顕微鏡でみたら小さなトゲでも見えるんじゃないかと思ったのがきっかけだったようです。そのままだと観察しにくいから、水につけてふやかしたら観察しやすいんじゃないかと思って水につけてみたら、あら不思議、小さな生物がうじゃうじゃいてびっくりしたそうです。
核の発見
ブラウンは、植物細胞の中に黒ずんだ小さなものを発見します。これが細胞の核の発見です。
ブラウンさんは、物理や化学の世界でも有名人です。あのブラウン運動を発見した人でもあります。核が何を意味するのものかは当時まだ分かっていませんでしたが、今では遺伝子の本体であるDNAを包み込んでいる構造体が核だと分かっています。
細胞説という学問の発展
シュライデンは、何かを発見した人ではありませんが、「植物は、細胞が一つ一つ集まって作られている」という仮説を立て、細胞学という学問の扉を開いた人です。この考え方を細胞説といい、植物についての細胞説を提唱しました。
同時期に、「動物は、細胞が一つ一つ集まって作られている」という仮説を立てたのがシュワンという人です。この人は、動物についての細胞説を提唱します。
のちにフィルヒョーという人は、「すべての細胞は細胞から生じる」という考えを提唱した人です。細胞説という考え方が、世に広められていきました。
当時、原子というものが発見され、化学という学問が急速に発展を迎えていました。生物学も細胞という基本単位を考えることで、学問として大きな発展を迎えられるのではという考えから、細胞説という考え方に結びついたようです。
細胞学の研究と顕微鏡
この時代の人たちは、自分で顕微鏡とか作っちゃうんですね〜すごーい!
当時は、顕微鏡の研究が盛んに進められていて、顕微鏡を使って色んなものを観察するのがブームだったらしいよ。
微生物とか見えちゃったらちょっと驚いちゃうかも、でも楽しそう♪
顕微鏡によって研究者たちの好奇心がかき立てられたことで、生物学の歴史が発展していったんだね。
顕微鏡の開発と細胞学の発展は、非常に密接な関係があります。
この時代はまだ光学顕微鏡というのが主流で、μm(マイクロメートル)の世界までしか観察できません。目に見えない細胞という構造があるということは発見できますし、かろうじ核も観察できたかもしれません。でも細胞の中の細かい部分までは見ることができません。
のちに電子顕微鏡が開発され、nm(ナノメートル)の世界が観察できるようになることで、染色体(遺伝子の本体であるDNAが細くひも状に連なったもの)などのより小さな構造体が観察され、生物学はさらに発展していくことになります。
ナノメートルは、化学に登場するタンパク質やデンプンなどの高分子と呼ばれる大きさの世界です。ナノテクノロジーとは、このような小さな世界を制御する技術とも言えますね。
本日のまとめ
細胞に関する研究の業績とその研究者の名前は覚えるしかない。
細胞が生物の基本単位であり、細胞は細胞から生じるという考え方を細胞説という。
細胞に関する研究の歴史は、細胞というミクロなものを観察する顕微鏡とともに発展してきた。